優生学の始まり

優生学という言葉をご存知だろうか?

 

優生学とは悪い遺伝を避け、良い遺伝を残して、子孫を優良にする目的で、配偶者の選択や結婚上の問題を科学的に研究する学問という定義が最も分かりやすい。

 

進化論で有名なダーウィンの従兄弟のフランシス・ゴルトンが提唱した学問だ。

 

ゴルトンはダーウィンの『種の起源』に刺激を受け、また自身がアフリカ探検の際に様々な人種と出会ったことにより優生学を探究するようになる。

 

ゴルトンの優生学に関する学問的な関心は、

①人間の身体的特徴、精神的特性の何が生まれつきなのか

②これらの特質がどのように遺伝するのか

③人間社会において望ましい特質の改良が普及するにはどのような政策が有効か

が興味の対象であった。

それらを統計学を用いて解決しようと試みる。

 

優生学はイギリスで義務教育の実施に伴い注目されてきた理論である。

当時、1890年の義務教育開始により低学力児の存在が顕在化した。

低学力児に対しどのように対応するべきか、その際に注目されてきた理論が優生学であった。

 

また、優生学が受け入れられた背景には、“社会ダーウィニズム”という世相が大きい。

社会ダーウィニズムとは、人間や社会をダーウィン的原理(進化論)を通して解釈しようとするものだ。

それまでの自然観はキリスト教の自然観が支配的であった。

創造主である神により全てが創られたという自然観であったが、ダーウィンの進化論はキリスト教の自然観を覆した。

もし、進化論が真実であるとするならキリスト教の論理的な整合が取れなくなる。

そこにキリスト教の没落と新しい科学万能主義的な風潮がその当時の社会にあった。

そして新しい信仰の対象である科学的な物の見方で社会を解釈しようと動きがあっても不思議ではない。

人間社会に適者生存、自然淘汰という考え方を持ち込んだわけだ。

 

こういった社会環境で優生学は始まった。

優生学が広がりを見せる話はまた別の機会に。

 

【参考文献】

優生学と人間社会』米本 昌平、松原 洋子、橳島 次郎、市野川 容孝(2000年)講談社

『比較「優生学」史』マーク・B・アダムズ(編著)佐藤 雅彦(訳)(1998)現代書館

優生学と障害者』中村 満紀男(編著)(2004)明石書店