金は天下の回りもの、して天下の起源とは?

中国ではじめて中華統一を果たしたのは秦。

その秦統一までを描いている『キングダム』という漫画がある。

大人気漫画であるから知っている人も多いと思う。

その漫画にとても面白い “お金” に関する洞察があったので紹介したい。 

 

漫画では、のちに秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)と、嬴政の最大の敵の呂不韋(りょふい)との討論の場面がある。 

呂不韋は元は商人でありながら、一国の相国(しょうこく:現代で言えば首相のようなもの)まで上り詰め、大王の嬴政の地位までも脅かす存在であった。

現に実質的には、政治は呂不韋が動かしていた。

そればかりか呂不韋は裏で糸を引き反乱、嬴政の暗殺を企てたりと様々なことがあったのだが、いよいよ因縁の対決も大詰めの場面で2人が “天下” に関して討論するシーンがある。

 

 “貨幣制度”が“天下”を作った

“金”が人の“欲”を増幅させたからです

人の欲…

千年以上前「商」の時代とも言われますが

貨幣制度の誕生で 物々交換であった それまでの世界は一変した

運搬し易く 腐らぬ貨幣は 物流に“距離”を与え

散在にしていた社会を 次々とつなげ広げていった

しかし 金のもたらした最大の発見は別の所にありました

裕福の尺度

あいつは“金”をいくら持っているのか

人は他人との裕福度の比較をする物差しを手にしてしまったのです

当然 生まれたのは“他より多くを得たい”という強烈な我欲

それから千年 物々交換の範囲で生きていた人々の世は

中華という広大で複雑な世界へとまで進化した

とどまることを知らず 成長し続ける我欲の応酬がなした業です

そして人は“天下”という言葉を口にしだした

かつての世は“天”の恩恵にあずかる世界

“下”はあまねく天に支配されるものであった

ーーが天の下が中華となりそれは

人間がその手で支配できるものではと思わせるものへと変わった

ハッハ

天も驚きでしょう

人が“金”を手にしただけでここまで増長・進化をとげるとは 

 

原 泰久(2015)『キングダム 39巻』集英社

 

人は食べないと生きてはいけない。

僕が物々交換でまずイメージするのは食べ物だが、 元手となる農業、狩猟では天候や運に左右される部分が多い。

そうなると天を崇め、祈る形をとるのは自然の流れ。

 

ただ、物々交換からお金を介在させた交換作業に変わっただけのことだが、利便性、貯蓄性、尺度が加わった。

お金は食べ物と違い腐ることがなく、保存ができる。

保存できるから貧富の差が生まれる。

貧富の差から羨望のような欲が底なしに湧いてくる。

それでも便利だから、お金を使用することは定着していく。

貨幣制度が定着していくと、食べ物を買うのもお金がなければ出来ないのが当り前となってくる。

いつしか、結局はお金が全てだーー

という帰結になり、いつしかお金が神のように崇められる。

 

“天下”  確かにこの言葉には、天を人が支配できるものというニュアンスがあるようにも思えてくる。

それを生み出したのは、お金だという洞察が面白い。

春秋戦国時代は資本主義は生まれてなかったのだが、この台詞は今の時代に生きる僕らにこそ身に迫るものがある。

 

 

呂不韋は言葉巧みに武力で中華統一を目指す嬴政をとがめ、商人出身の自分なら秦国を

中華一の経済大国にし統治してみせると豪語する。

そちらの方が武力と違い血も流さず、民を幸せになれると畳み掛ける。

 

キングダムは熱くて、最高に面白い漫画だ。

嬴政がどのように呂不韋を論破するのかは、実際に漫画を読んで確認して欲しい。